パワハラかもしれない会話を録音したあと、「これは証拠になるのだろうか」「相手に言わずに録ってよかったのだろうか」と迷うことがあります。先に結論を書くと、録音があることと、それがどう評価されるかは別の問題です。評価は、会話への関わり方、録音の目的や方法、そのあとの使い方など、個別の事情で分かれます。この記事では、民事訴訟法と厚生労働省の案内で扱いが分かれる理由を確かめたうえで、手元の録音を失わず、相談で起きたことを伝えやすくする残し方を整理します。

この記事の要点

  • 民事訴訟法には録音テープや電磁的記録を証拠として調べる定めがありますが、どう評価するかは裁判所がほかの資料とあわせて判断します
  • 相手に知らせずに録音することは、目的・方法・状況によって評価が分かれるため、この記事ではすすめず、迷うときは弁護士などに確認します
  • 録音の原本は編集せずに残し、日時・場所・会話の前後を書いたメモと一緒に保管します
  • SNSなどへの公開・拡散は、名誉やプライバシーをめぐる別の問題につながるおそれがあるため避けます
  • 録音がなくても、メモやメール・チャットを日付でつなげて相談を始められます
目次(8項目)
  1. 結論:録音の評価は決めつけず、原本と前後のメモを残す
  2. 相手に知らせずに録音することについて
  3. 録音の原本と、一緒に残しておくメモ
  4. SNSなどでの公開・拡散は避ける
  5. 録音がない・録れなかったとき
  6. 相談先で確かめたいこと
  7. きろくねで録音とメモをまとめるなら
  8. よくある質問

結論:録音の評価は決めつけず、原本と前後のメモを残す

会話の記録を残す前に、状況を落ち着いて整理するイメージ
会話の記録を残す前に、状況を落ち着いて整理するイメージ

民事訴訟法には、録音テープのような文書でない物件(第231条)や、電磁的記録(第231条の2)を証拠として調べるための定めがあります。録音を裁判の資料として出す道は、法律に用意されているということです。一方で、裁判所は口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をもとに、自由な心証で事実を判断するとされています(第247条)。録音が1本あれば結論が決まるのではなく、ほかの資料や前後の経過とあわせて見られる、と考えておくと落ち着いて準備できます。

会社の相談窓口でも同じです。厚生労働省のパワハラ防止指針は、相談を受けた会社の対応の例として、相談者と行為者の双方から事実関係を確かめ、主張が食い違って確認が十分にできないときは第三者からも話を聞く、といった進め方を挙げています。録音はその場の言葉を確かめる手がかりの一つになり得ますが、それだけで判断されるものではありません。

相手に知らせずに録音することについて

厚生労働省の「あかるい職場応援団」は、ハラスメントと思われる行為をされた場合に、いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのように(5W1H)したかを記録するよう勧め、「メモや録音など最適な方法で記録を残すことをお勧めします」と案内しています。録音は、メモと並ぶ記録の方法の一つとして挙げられています。

ただし、相手に知らせずに録音することが問題にならないかは、自分がその会話に加わっていたか、何のために録ったか、どこでどう録ったか、録音をどう使ったかによって評価が分かれます。この記事は、無断で録音することをすすめるものではありません。職場によっては、就業規則などで録音や業務情報の持ち出しについて定めていることもあります。これから録音するか迷っているときや、手元の録音を手続きで使うか考えているときは、弁護士などに事情を伝えて確認してください。

録音には、相手だけでなく同僚や取引先の声、業務上の情報が入っていることがあります。保管や共有の範囲は、そうした人たちの情報も含まれている前提で考えます。

録音の原本と、一緒に残しておくメモ

録音をしたら、音声データとは別に、あとから録音の位置づけを思い出せるメモを短く残します。次の書き方の例は架空のものです。

残すもの

書き方・残し方の例(架空)

録音の原本

録ったときのファイルを編集・上書きせずに残す。聞き返すときや誰かに渡すときはコピーを使う

日時・場所・その場にいた人

「6月3日 16時ごろ、第2会議室、上司と自分の2人」。正確でない部分は「ごろ」と書く

会話の前後

何の業務の話だったか、直前に何があったか、そのあとメールや面談があったか

気になった発言の位置

「開始から12分ごろ」のようなだいたいの位置と、覚えている言葉

自分への影響

眠れない、出勤がつらい、受診したなど、その後の変化

書き起こしを作るなら、原本とは別のファイルにします。聞き取れない部分は「聞き取れない」と書き、言葉を補いません。一部だけを切り出したものしか残っていないと、前後の文脈が分からず、かえって説明しにくくなることがあります。どの部分をどう渡すかは、原本を残したうえで相談先に確認してください。

SNSなどでの公開・拡散は避ける

相談のために保管することと、不特定多数に見せることは別です。法務省は、インターネット上での名誉やプライバシーの侵害を人権問題として挙げ、掲載された側はプロバイダなどに削除を依頼したり、発信者の情報の開示を請求したりできると案内しています。録音や相手の名前をSNSに載せると、今度は自分が削除や開示を求められる側になるおそれがあります。見せる相手は、相談先など必要な範囲にとどめます。

録音がない・録れなかったとき

録音が間に合わなかったことで、自分を責める必要はありません。厚生労働省の案内でも、記録の方法としてメモが挙げられています。出来事の直後に書いたメモ、メールやチャット、会議予定、勤怠などを日付で結び付けると、経過を説明しやすくなります。録音以外に残せる資料は録音以外に残せる資料の整理、メモの書き方はパワハラの記録を時系列で残す方法にまとめています。

録音しようとすることで危険が増える、端末を確認されるおそれがある、と感じるときは、録音やメモより自分の安全を優先してください。

相談先で確かめたいこと

相談の場で、録音の評価を自分で結論づける必要はありません。「いつ、どこで、誰と、どのような場面で録音したか」「ほかに残っている資料」「いま困っていること」を順に伝え、録音をどう扱えばよいかを尋ねます。

  • 社内のハラスメント相談窓口・人事:職場での事実確認や対応を求めたいとき。録音を渡す前に、誰が聞き、どう保管されるかを確かめます。指針では、相談者のプライバシーを守る措置や、相談したことを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知することが、会社に求められています。
  • 総合労働相談コーナー(都道府県労働局など):予約不要・無料で、面談か電話で労働問題を相談できます。助言・指導やあっせんといった制度の案内も受けられます。
  • 法テラス・弁護士:録音を手続きで使うか、相手に知らせずに録った録音をどう扱うかなど、法的な見通しを個別の事情に沿って確かめたいとき。法テラスには、経済的に困っている人向けの無料法律相談があります。

窓口ごとの違いはパワハラの相談先の選び方で整理しています。出来事を時系列に並べることから始めるなら、誰かに相談する前の、自分のためだけの整理も参考にしてください。心身のつらさが強いときは、記録の整理より受診や休養を優先してください。

きろくねで録音とメモをまとめるなら

きろくねでは、録音・メモ・写真を一つのケースに時系列で並べられ、保存するときに、出来事が起きた日時を選べます。端末が対応していれば、録音を端末の中で文字にできます。ほかのアプリで録った録音ファイルを読み込む機能はないため、その場合は原本を元のアプリに残したまま、録音の名前と保存場所、日時をメモに書いてつなげます。記録は端末の中に保存され、Face ID やパスコードでロックできます。録音が証拠として使えるか、どう提出するかは判断しません。

iPhone版きろくねで、録音とメモを日時順に残す

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。

よくある質問

相手に無断で録音するのは違法ではありませんか?

相手に知らせずに録音したことがどう評価されるかは、会話に加わっていたか、録音の目的、録り方、その後の使い方などで分かれます。この記事では判断せず、無断での録音をすすめることもしません。手元の録音を使うか考えているときは、弁護士などに個別の事情を伝えて確認してください。録音の公開・拡散は別の問題につながるおそれがあるため避けます。

スマホで録った録音は、証拠として扱われますか?

民事訴訟法には、録音テープのような文書でない物件や電磁的記録を証拠として調べるための定めがあります(第231条・第231条の2)。ただし、どう評価するかは、裁判所がほかの資料や経過とあわせて判断します(第247条)。スマホかどうかより、原本を編集せずに残し、日時・場所・会話の前後をメモしておくことが、相談で説明するときの助けになります。

録音の一部だけを切り出して相談先に渡してもいいですか?

原本は編集せずに残し、切り出しはコピーで行います。一部だけだと前後の文脈が伝わりにくくなるため、どの部分をどう渡すかは相談先に確認してください。

録音がなく、メモしか残っていません。意味はありますか?

厚生労働省の案内でも、記録の方法としてメモと録音が並べて挙げられています。日時・場所・言動・その後の影響をメモにし、メールやチャット、会議予定など手元の資料と日付でつなぐと、相談先に経過を伝えやすくなります。資料がどう評価されるかは、相談先や手続きによって異なります。

出典・参考

パワハラの録音は証拠になる?扱いが分かれる理由と、原本・メモの残し方のイメージ

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。